• 発表
    • 自己論と物語論のつながり

    • 浅野智彦(東京学芸大学教育学部)

    • 要旨
       自己論と物語論のつながりについてお話ししてみたいと思っています。1990年代以降 、<自己は自分自身について物語るという営みを通して構成される>という見方が様々 な領域で広く支持されるようになってきました。ある社会学者はこれを、「人生の自伝 化」とよんでいます。けれども私は自伝というこの比喩に次の二つの違和感を覚えます 。
      1、自伝と自己(あるいは人生)は完全にイコールなのだろうか。自伝においては語ら れなかった、語ることのできなかったものは、人生にとって無に等しいということなの だろうか。
      2、自伝という比喩は「一冊の本」という何かきちんと統合されたものを連想させるが 、人生はそれほど統合されているだろうか。
      以上の二つの違和感について、それぞれ具体例を取り上げて検討し(前者については 記憶のトピックを、後者については最近の若者調査のデータを紹介してみようと思いま す)、<人生=自伝>というモデルとは少し違った形で自己物語論を構想できないか考 えてみようと思います。