• 発表2
    • グローバル化の中の移植医療:海外渡航移植の事例から

    • 山崎吾郎(大阪大学大学院人間科学研究科・日本学術振興会特別研究員)

    • 要旨
       日本は、先進国の中でもとりわけ臓器の提供件数が少ない国であることが知られてい る。その原因として、「身体観の違い」や「宗教上の理由」、「制度的特性」、「愛他 精神の有無」など、さまざまな要因がこれまで取り挙げられ、議論されてきた。今回の 発表では、こうした「原因探し」からは距離をとり、その事実がどんな帰結をもたらし ているのかという点に焦点を当てたい。すなわち、海外への渡航という人の動きである 。
       グローバル化の進行する今日の世界では、医療制度を一国内の問題に限定して論じる だけでは不十分であり、多かれ少なかれ世界医療システムの一部としての側面を考慮す る必要がある。ところが、移植医療における海外への渡航現象は、国内的には「正規の 医療活動」ではないため、個人的なネットワークを利用して行われるケースがほとんど である。それゆえ、こうした人の動きを全体像として把握することには困難が伴う。実 際、海外渡航移植(とりわけ腎臓移植)に関しては、正確な統計すらほとんど存在して いないのが現状である。
       本発表では、報告者のこれまでの調査結果に基づいて、海外渡航移植者が抱える苦悩 や彼らを取り巻く状況を報告するとともに、移植医療に関して従来なされてきた国内向 けの閉鎖的な政策論争や倫理問題を批判的に検討したい。