- 発表1
- 子どもの医療化をめぐる母親のジレンマ:AD/HD親の会でのインタビュー調査を事例として
- 佐々木洋子(大阪市立大学大学院)
- 要旨
本報告では、2003年に行ったAD/HD(Attention-Deficit /Hyperactivity Disorder、
注意欠陥/多動性障害)の親の会に参加する母親10名に対するインタビュー調査につい
て報告させていただきます。
AD/HDとは、アメリカ精神医学会の発刊する『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM
)』に定められた定義によれば、7歳未満で発症、「不注意」、「多動」、「衝動」を
特徴とする行動症候群である。AD/HDなどの子どもの「問題行動」についての社会学的
研究は、これまで主に医療化論の視点 からなされている。これらの医療化論では、医
療化に伴う人道主義的側面が強調されており、「落ち着きのない子ども」から「AD/HD
の子ども」への定義 上の変遷は、当の子どもはもちろん、その「(とりわけ母)親」
や「教師」からも、「問題行動」に対する責任を免除するといわれている。しかしもう
一方 で、医療化の暗い側面として指摘されているように、「責任から免除されること
によって、その人の社会的地位は引き下げられる」といった可能性もある (Conrad an
d Schneider, 1992 = 2003:467-470)。
本報告では、子どもの「診断」にともなう母親の意味世界の変容を追うことで、この
ような免責や社会的地位の低下などの医療化のもたらす帰結 が、実際に母親にはどの
ように経験されているのか、という点を中心にみていきたい。