• 発表1
    • 母体血清マーカー検査における女性の「自己決定権」と妊婦の「自己決定権」:臨床検査会社の調査を中心に

    • 天沼理恵(天竜病院付属看護専門学校非常勤講師:社会学)

    • 要旨
       近年の生殖医療をめぐる技術の発展はめざましい。出生前診断技術においても母体血清マーカー検査が登場し、出生前検査の普及に伴う様々な問題が出てきている。
       本稿では、この母体血清マーカー検査を推進する検査会社の論理に焦点を絞ることにより、その論理が意味することは何かについて明らかにすることを目的としている。研究の方法としては、これまでの母体血清マーカー検査の語られ方や議論を分析するための文献調査と、臨床検査会社のインタビュー調査を行った。

       □文献調査では、医学論文や、検査の普及に制限を加えた「母体血清マーカー検査に関する見解」(以下「見解」)を出した旧厚生省審議会の議事録、新聞やテレビ等マス・メディアによる報道、研究者による市民の意識調査や論文等を分析検討した。そこでは、母体血清マーカー検査は、商業主義的普及と、中絶の自由である女性の「自己決定権」に焦点が当てられ批判的に語られていることがわかった。

       □一方、インタビュー調査では、現在検査を提供している臨床検査会社5社のうち3社を訪問して検査担当者にインタビューを行い、検査推進の論理は、患者である妊婦が自由意思で検査を受検できる妊婦の「自己決定権」の保障であることを確認した。ここに検査提供側と検査受検側の論点のずれを確認し、母体血清マーカー検査のより丁寧な議論の必要性が示唆された。また、検査推進論理の論理的正当性から検査の受検を制限する「見解」の限界や、これまで生命倫理学によって原理として構築されてきた「自己決定権」という「権利」の論理そのものの見直しも必要であることが示唆された。