• 発表1
    • 性同一性障害をめぐる諸問題:何が問題から漏れているのか

    • 石田仁(中央大学大学院/明治学院大学・聖マリアンナ医科大学非常勤講師:社会学・セクシュアリティ研究)

    • 要旨
       日本で性別越境を望む人びとは、90年代後半あたりから、精神疾患単位である「性同 一性障害」という参照概念によって解釈される習慣が定着しました。初期でこそその「 (再)医療化」には、同性愛者やフェミニズムなどから反論が寄せられましたが、この 概念がてこになって、医療上の整備や法整備は急速に進んでいき、性別越境を願う人び とをとりまく社会状況が劇的に変化したのは抗えもない事実です。多くの面では、同性 愛(者)をとりまくそれより一歩先んじたといえるかもしれません。
       しかし同時にその状況変化は、ある問題についての特化と、別の問題への等閑視を生 んだように思います。本報告では、かかる状況変化のもとで、現在何が問題とされてお り、他方で/それゆえ何が問題から看過されているのかということを、総括的に、また やや原理的な水準で、話題提供することにします。特に、報告者が重要と思う「看過点 」とは、(a)「性転換手術」が医療行為であることを確保しようとした際の不透明性、( b)「性同一性」「性同一性障害」そのものの定義、(c)派生的表現である「性同一性障 害者」の是非、(d)日本精神神経学会の最新ガイドライン(第3版)が主張する「自己 決定=自己責任」の4点です。当日は、同性愛をはじめとするさまざまなセクシュアリ ティとの比較、あるいは他の医療行為・医療制度との比較などを通して、実りのある議 論ができればと思っております。

    • 参考文献
      • 加藤秀一・海老原暁子・石田仁, 2005, 『図解雑学ジェンダー』 ナツメ社、pp.180-187.
      • 日本精神神経学会, 2006, 「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第三版)」
      • APA, 2000, "Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Forth Edition, Text Revision; DSM-IV-TR, "The American Psychiatric Association. = 2004、 高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳『DSM-IV-TR 精神障害の診断・統計マニュアル』 医学 書院.

    • 主要業績
      • 村上隆則・石田仁2006「戦後日本の雑誌メディアにおける『男を愛する男』と『女性化した男』の表象史」矢島正見編『戦後日本女装・同性愛研究』中央大学出版部、pp. 519-556.