- 発表2
- 近代日本の衛生体験:新中間層における一局面
- 宝月理恵(お茶の水女子大学大学院)
- 要旨
本報告の目的は、近代日本における「衛生」をめぐる先行研究の系譜を批判的
に継承し、「当事者の経験」を一助として、より複層的な視点で衛生規範や衛生知識の
受容者像を捉えなおす可能性を探ることにある。
主に1990年代以降、近代衛生の概念とシステムが、近代日本社会において身体に働く
政治/権力技術の一つとして捉え直され、歴史構築的分析の対象となってきた。これら
の先行研究は、衛生思想や知識を啓蒙する側やその媒体の分析を蓄積してきたが、相対
的に受容者側への分析視覚は希薄であり、受容者は衛生規範を内面化した集団として一
枚岩化され、彼/女らがいかに個々の衛生を経験したか、その行為実践の内包に目が向けられることは少なかった。
そこで報告者は大正・昭和生まれの高齢者への聞き取り調査を行い、彼/女らの子ど
も期の衛生経験の語りから、1930年代前後における彼/女ら自身と家族(特に母親)の
日常的衛生実践の一局面に着目する。対象となる時期は、公衆衛生から個人衛生へと政
治的・政策的関心の比重が移り、児童に対する衛生教育の必要性が一層の高まりを見せ
た時代である。このような状況において望ましい衛生規範を内面化するロールモデルとなったと言われる新中間層家庭および彼/女らが通う学校において、いかなる衛生実践が行われていたのか、調査結果の一端を報告、検討したい。
- 関連業績
- 「一九三〇年代母親の衛生実践の一局面―新中間層家庭における」『ソシオロジ』no
.158, pp.125-141,2007年.
- 「昭和戦前期における日常生活の中の『衛生』体験―女子高等師範学校卒業生の語り
から」『お茶の水女子大学21世紀COEプログラム平成15年度公募研究成果論文集』pp.83
-97,2004年.