• 発表1
    • 憑依が再定義される過程:<状態>の病から<存在>の病へ

    • 兵頭晶子(日本学術振興会特別研究員)

    • 要旨
       かつて、多くの精神病を始めとする原因不明の病のほとんどは、憑依という共 通理解の対象であった。そこで病は、自らを取り巻く世界とのバランスが一時的に崩れ た〈状態〉だととらえられ、それを元に戻す場としての社寺などには、病者と家族を支 える多くの人々が集っていた。しかし、こうした民俗治療システムに対峙した精神病学 は、数ある憑依の中から、人格変換を主な症状とする病だけを精神病として取り出した 。病者は、もはや自らを取り巻く世界との関係ではなく、遺伝や生活歴を束ねる主体と して創出された自己という〈存在〉を病むのだと再定義される。だが、精神病学が目指 した精神病院システムは予算の関係から確立されず、精神病という概念を受肉化させて いったのは主に私宅監置システムであった。私宅監置をめぐる言説と実践は、精神病に どのような意味を付加していったのか。そして、〈存在〉の病であるという再定義や、 かつての共同的な治療空間から物理的・精神的に隔離された監置は、他ならぬ病者や家 族にとって一体何であったのか。本報告ではこうした視座から、憑依が再定義される過 程の真の意味を検討していく。時期的には、明治・大正・昭和期を対象とした報告にな る。

    • 関連業績
      • 「憑依が精神病にされるとき──人格変換・宗教弾圧・精神鑑定」川村邦光編著『憑 依と近代のポリティクス』青弓社、2007年(近刊)
      • 「2つの阿波井神社の歴史から──民間療法施設と精神病院の近代」 『治療の聲』 7巻1号、2006年
      • 「喜田貞吉における「憑物」問題をめぐる再検討──「患者筋」の発見と「憑物筋」 への眼差し」 『日本思想史研究会会報』21号 、2003年