• 発表1
    • 「摂食障害をめぐるトラブルのミクロ政治学――病いの経験への意味づけの推移」

    • 中村英代(日本学術振興会特別研究員)

    • 要旨
       報告者はこれまで、摂食障害の回復者を対象にインタビュー調査を行 ってきた。その際、社会的に普及している摂食障害解釈や専門家の診断 など、摂食障害をめぐる各種言説環境が当事者に大きな影響を与えてい ることが確認できた。たとえば、摂食障害という言葉を知るという経験、 医師や専門家によって診断される経験などは、食をめぐる問題に対する 意味づけを当事者が構成する契機になっていた。そして、自己の困難を どのように意味づけるかは、問題への対処にも深く関係してくるため、 症状の悪化や回復にも大きく関係していることが明らかになった。
       そこで、本報告では、こうした回復者の事例を取り上げ、摂食障害の 発症から回復にいたるまでの経緯を、言説環境との関係に着目しながら 考察していきたい。過食や嘔吐といった経験への意味づけがどのように なされ、またそれらがどのように移り変わっていくのか。さらに、トラ ブルへの意味づけは、拒食や嘔吐、過食の悪化や回復にどのように関係 しているのか。こうした問いを明らかにしていく。
       以上の考察からは、第1に、摂食障害の発症、維持、回復について、 言語や意味、そして物語が非常に重要だということ、第2に、摂食障害 をめぐる現在の言説環境や専門家の介入の仕方が様々な問題をはらんで いることが示される。
    • 関連業績
      • 中村英代,2006「『病いの語り』と『治癒の語り』―摂食障害の『回 復者』への質的調査から」『年報社会学論集』19: 165-176.
      • 中村英代,2007「過食症―『がんばらなくていい』ということ、『が んばらないと治らない』ということ」本田由紀編『若者の労働と生活世 界―彼らはどんな現実を生きているか』大月書店: 253-285.